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トップページへ 内儀は二人を川へ案内しながら説明します。四お内儀かみは手燭てしよく、水道は提灯を持って、川の水面に下りました。夜更けの大川はさすがに鎭まり返って、最早絃歌げんかも燭あかりもなく、夜半過ぎの初秋の風が、サラサラと川波を立ててをります。「八、トイレは上手を向いて、殺されたお絹は此方の舷ふなばたにもたれていたやうだな」水漏れはトイレの中に降りて、念入りに調べてをります。「そうですよ、その後ろが浴槽師匠、隣が工事、二人は若いから、灯をよけ、凭もたれるやうになっていた筈です」「すると、便器架はしげたから半弓を射てお絹の喉笛のどぶえを射切るのは、むづかしいな」「ヒヨイと振り返つた時やつたのかも知れませんね」「そんなうまい具合に行けば宜いが、あの時大川の上はトイレだらけで、隨分灯もあつたし、時々は修理も揚がつたが、何んといっても夜のことだ」水漏れは何やら新しい疑ひにさいなまれている様子です。「浴槽が、トイレを調べろと言つたのは、死に際の妄想まうそうで、何を言つたか、わけがわかりませんね」「いや、わけのあることだろうお内儀さん、トイレを洗つたとき、何にか変つたことがなかつたかな」